ご先祖さまの証文のせいで、ホテル王と結婚させられ、ドバイに行きました
 真珠の話が一区切りついたところで桔平は言った。

「今日来てもらったのは他でもない。
 お前に報告したいことがあったからだ」

 断られたら嫌だな、という思いから、つい、そんな仕事中のような物言いで言ってしまう。

「ちょっと休みがとれそうなんだが。
 何処か行きたいところはあるか」

「そうですねえ」
と真珠は少し考えたあとで、

「でももう結構いろいろ行っちゃいましたしね~。
 お仕事忙しいのなら、無理されなくていいですよ」
と言ってくる。

 いや、だから断るな……と思いながら桔平は言った。

「砂漠なんてどうだ?」
「え?」

「まだ行ってないだろ、デザートサファリ。
 ラクダにも乗れるぞ」

 デザートサファリは、動物を見るのではなく、砂漠を観光するサファリだ。

 わあ、と真珠は喜び、
「ラクダで横断とかするんですか?」
と前のめりに訊いてくる。

 いや、そんな莫迦な……。

「車でだが。
 そういえば、お前、意外に車好きだろ」

「な、なんでですか?」
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