ご先祖さまの証文のせいで、ホテル王と結婚させられ、ドバイに行きました
ルーフトップラウンジに移動し、砂漠に沈みゆく太陽を眺めながら、また少し呑んだ。
夕日を楽しむためにか、洒落たランプがあちこちにあるだけで、他の灯りはないので、ラウンジの中を歩く人々が黒い影のように見えて雰囲気がある。
「そういえば、明日の朝、後輩がドバイに着くんだ」
そんなことを桔平が言ってきた。
「ああ、例の後輩の方」
「ドバイは不慣れなようだから、さすがに早朝は無理だが、早めに迎えに行ってやろうかと思って」
空港のラウンジで寝て待ってると言っていた、と言う。
「大丈夫ですか?
今日、もう帰っておいた方がいいんじゃないですか?」
真珠はそう言ったが、桔平は夕日を見ながら、いや、と笑い、言ってくる。
「ここの方がお前と、まったりできるからいい。
旅はいいな。
……いやまあ、俺は職場と行ったり来たりではあるんだが。
真珠、こんな場所だと、非現実的な雰囲気があるから、俺と恋に落ちてもいいかなとか思うだろ」
そう笑ったあとで、桔平は侑李もここにいたことを思い出したらしく、
「侑李と恋に落ちてないだろうな」
と真珠の長い髪を指先でつまみ、引っ張ってきた。