ご先祖さまの証文のせいで、ホテル王と結婚させられ、ドバイに行きました
「偽装結婚だが、結婚はしている。
 俺は俺で、こいつにちゃんとプロポーズしようかなと思ってたんだが。

 さっきまでお前を熱烈応援していた気持ちの持って行き場がなくなったから、とりあえず、お前、告白しろ」

 なんだかんだで人がいいな、この人。

 ……いや、知ってましたけどね、と思いながら、真珠は二人のやりとりを眺めていた。

 二人は、いやいや、先輩こそ、どうぞどうぞと譲り合う。

 このまま私を置いて、二人で呑みに行ってしまいそうだな……と思ったが、譲り合った末、中峰の方が告白してきた。

「花木。
 こんなことになってしまって。

 なにをしに来たのかわからなくなってしまったんだが……。

 でも、ずっと胸に引っかかってたんだ」

 突然、お前が会社を辞めてしまって、なにも言えないまま終わってしまったことが、と中峰は言う。

「お前がサークルに入ってきたあの日から、ずっとお前が好きだった。

 ……僕と結婚してくれないか? 花木」

 楽しげな外国人の家族連れなどが横切っていく騒々しい中でも、中峰はそう真摯に告白してきてくれた。
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