ご先祖さまの証文のせいで、ホテル王と結婚させられ、ドバイに行きました
迎えに来た車に乗り、空港を出ても、まだ外は薄暗く、夜明け前の雰囲気だった。
夏のドバイは気温が50度以上になったり、湿度が100%になったりと大変だが。
冬は平均気温が20度から25度と過ごしやすい。
今が一番いい時期だった。
後部座席に座る真珠は横に座る桔平とは距離をとり、窓の外を眺めていた。
雲海のような霧の中から幾つもの最新の高層ビルが覗いている。
冬のドバイではよく見られる光景のようだった。
そんなドバイには不思議な額がある。
ドバイフレームという街の中にいきなり現れる世界最大の額縁だ。
ゴールドのフレームの上部にはスカイデッキがあり、そこからは高層ビルが建ち並ぶ現在のドバイと昔のままのオールドドバイが一望できる。
そのドバイフレームも霧の中に突き立っている。
近未来都市のような不思議な光景。
こういう始まり方だったせいか。
旅の間中、すべてが現実じゃないかのように感じていた。
まあ、そもそも、二度と会わないと思っていた夫に呼び出されたところから、夢のような気がしているのだが。