ご先祖さまの証文のせいで、ホテル王と結婚させられ、ドバイに行きました
「夕食はサンドバンクでとるように変更しておいたから」
戻ったヴィラで桔平が言うと、真珠は喜んだ。
「わあ、嬉しいですっ。
サンドバンクピクニックとか行きたかったんですけど。
今回、ひとりなんでちょっと、と思ってたんですよ」
「お前でもひとりではちょっととか思うのか」
は? と真珠が訊き返してくる。
「いや、お前はひとりでほっといても楽しそうなんで、何処でもひとりで行けて、なんでもひとりでやれるのかと思ってた」
「……それって捨てられるパターンですよね。
男の人って、君はひとりでもやっていける、とか言い出して、女性を捨てるんですよっ」
捨てられたことがあるわけでもなさそうなのに、真珠はドラマの見過ぎか、小説の読みすぎか、そんなことを熱く語ってきた。
いや、俺は逆に捨てられそうで怖いんだが。
私ひとりでやっていけます、とか言い出して。
今現在、その状態だしな、と思いながら、桔平は、
「……そうか」
と言う。