ご先祖さまの証文のせいで、ホテル王と結婚させられ、ドバイに行きました
 


「夕食はサンドバンクでとるように変更しておいたから」

 戻ったヴィラで桔平が言うと、真珠は喜んだ。

「わあ、嬉しいですっ。
 サンドバンクピクニックとか行きたかったんですけど。

 今回、ひとりなんでちょっと、と思ってたんですよ」

「お前でもひとりではちょっととか思うのか」

 は? と真珠が訊き返してくる。

「いや、お前はひとりでほっといても楽しそうなんで、何処でもひとりで行けて、なんでもひとりでやれるのかと思ってた」

「……それって捨てられるパターンですよね。
 男の人って、君はひとりでもやっていける、とか言い出して、女性を捨てるんですよっ」

 捨てられたことがあるわけでもなさそうなのに、真珠はドラマの見過ぎか、小説の読みすぎか、そんなことを熱く語ってきた。

 いや、俺は逆に捨てられそうで怖いんだが。

 私ひとりでやっていけます、とか言い出して。

 今現在、その状態だしな、と思いながら、桔平は、
「……そうか」
と言う。
< 37 / 189 >

この作品をシェア

pagetop