ご先祖さまの証文のせいで、ホテル王と結婚させられ、ドバイに行きました
最後の客に料理を出し、片付けが始まったところで、真珠がいる近くのテーブルに座っていた佳苗が豚汁を啜りながら訊いてきた。
「真珠。
あんた、なにやらかして会社クビになったのよ」
いや、何故、クビ限定……とザルを洗いながら真珠は思う。
「はあ、まあ、いろいろありまして。
でも、ここのお仕事、すごく楽しいんですよ。
私がお出ししたご飯を食べて、みなさんがお仕事頑張ってくださるとかっ。
とっても、やりがいがありますっ」
いや、まだまだ慣れないので、言われたものをよそったり、カウンターに出したりしているだけなのだが……。
OLとして働いていたとき、社食は安らぎの空間だった。
自分もそんな場所で働けたら、と思い、ちょうど求人があったので、応募してみたのだ。
いまいち不器用な自分でも、おばちゃんたちは丁寧に教えてくれた。
真珠がおばちゃんたちに感謝したそのとき、ポケットに入れていたスマホが鳴った。
ああ、しまった、音切ってなかった、と思いながら、一通り片付けたあとで、スマホを見てみる。
入っていたのはショートメッセージだった。
「今すぐ来い」