ご先祖さまの証文のせいで、ホテル王と結婚させられ、ドバイに行きました
「ともかく、俺はこのままお前と夫婦でいることにしたから、襲われろ」

 いや、勘弁してください、と真珠は肩にのった手を払う。

「魚が見てます」

「心配するな、サメも見ている」
「余計問題です」

 そのまま押し倒されそうになり、桔平の肩を押し返しながら、真珠は叫んだ。

「日本のお巡りさんに通報しますっ」

 結局、ドバイの110番がわからなかったからだ。

「ここから110番して通じるかっ」

「近所の交番に直接電話しますっ」

 この間、落とし物したとき聞いたんですっ、と真珠は言ったが、

「忙しい日本のお巡りさんの手をわずらわせるなっ」
と叱られる。

「『はい、どうされました?』
 『私、今、ドバイにいるんですけど~』とか言うつもりかっ」

 ……あの、後半のゆる~いしゃべりは、もしや、私のモノマネですか……?

 そう思う真珠の上に乗ったまま、桔平は真面目な顔で言ってくる。
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