ご先祖さまの証文のせいで、ホテル王と結婚させられ、ドバイに行きました
 


 シャワーを浴びたあと、真珠は少しの灯りを残したまま、ベッドに入った。

 ぼんやり海中が見える。

 魚が行き交うのを眺めているうちに眠っていた。

 あの谷中の家の縁側に桔平と二人で腰かけていた。

 いつも朝顔がある場所に朝顔はなく、支柱には巨大な白い蕾がついた蔓が巻きついていた。

 夜になり、谷中の空がモルディブのような一面の星に覆われる。

 月光を浴びた蕾がゆっくりと花開いた。

 月下美人のようなその可憐な白い花の中には、おしべやめしべの代わりにサメの頭があった。

 せめて、鯛かマグロのお(かしら)だったらっ、と頭を抱える夢を見た。


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