ご先祖さまの証文のせいで、ホテル王と結婚させられ、ドバイに行きました



 ドバイ三大スークのうちのひとつ、スパイススークをまず覗いてみる。

 着いた途端、すごい匂いがした。

「……立ってるだけで、甘いような辛いような、ピリピリするような。
 勝手に口の中になにかを突っ込まれた感じです」
と言って、桔平に笑われる。

 道の両側には、ずらりと店が並んでいて。

 樽や麻袋に詰められた大量のスパイスが所狭しと並んでいる。

「こんなにスパイスあっても、なにに使っていいのかわかりませんね」

「そもそもお前は料理をするのか」

 ……料理っていうのは、どの辺からが料理なんでしょうね、と真珠は思っていた。

 火を使えば料理なら、ただあっためるだけも料理ですよね、と思いながら、乳香を眺める。

「欲しいのか?」
と桔平が訊いてきた。

「ドバイといえば、サフランと乳香と聞きましたので」

 高価なサフランがここでは比較的安価に手に入るらしいのだが。

 料理はしないので、そっちには、あまり興味はない。
< 91 / 189 >

この作品をシェア

pagetop