ご先祖さまの証文のせいで、ホテル王と結婚させられ、ドバイに行きました
ドバイ三大スークのうちのひとつ、スパイススークをまず覗いてみる。
着いた途端、すごい匂いがした。
「……立ってるだけで、甘いような辛いような、ピリピリするような。
勝手に口の中になにかを突っ込まれた感じです」
と言って、桔平に笑われる。
道の両側には、ずらりと店が並んでいて。
樽や麻袋に詰められた大量のスパイスが所狭しと並んでいる。
「こんなにスパイスあっても、なにに使っていいのかわかりませんね」
「そもそもお前は料理をするのか」
……料理っていうのは、どの辺からが料理なんでしょうね、と真珠は思っていた。
火を使えば料理なら、ただあっためるだけも料理ですよね、と思いながら、乳香を眺める。
「欲しいのか?」
と桔平が訊いてきた。
「ドバイといえば、サフランと乳香と聞きましたので」
高価なサフランがここでは比較的安価に手に入るらしいのだが。
料理はしないので、そっちには、あまり興味はない。