ご先祖さまの証文のせいで、ホテル王と結婚させられ、ドバイに行きました
 美しい香水の瓶を眺めて、またアブラに乗ると、今度はテキスタイルスークを訪ねる。

 カラフルな布製品がずらりと並んでいた。

「スパイススークもでしたが、何処もかしこも、色の洪水ですね。

 ……しかし、何処のスークでも、日本人と見るや、オカチマチ! オカチマチ! と笑顔で叫んでくるのはなんなんですかね?」

 時に強引な客引きに桔平ごと連れ去られそうになりながら、スークを抜け、近くにあるバスタキヤ地区に向かった。

 アラブの伝統的な建築物や雰囲気の残る町だ。

 スークにもあった風の塔がここにもある。

 風の塔は四角い煙突のような形で、上空の涼しい風を入れ、室内の熱気を外に逃してくれるらしい。

 エアコンの普及で、本来の意味ではあまり使われなくなったが、デザインとして、今の建築物にも取り入れられているらしく、あちこちで見かけた。
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