ご先祖さまの証文のせいで、ホテル王と結婚させられ、ドバイに行きました
 


 今の生活に疲れたとき迷い込みたい町か。

 まあ、わかる気がするな、と桔平は思っていた。

 俺もずっと夢の中にいるような気がしている。

 お前が側にいるからだろうかな。

 ……五年間、特に変化のない関係だった真珠が今、ここにいる。

 俺は……この町に、お前と迷い込みたい。

 そのまま出られなくなってもいいから。

 そう思っていたが、やはり言葉には出せず、

「夕食、ここで食べるか?
 それとも街に戻るか?」
とまた素っ気なく言ってしまった。




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