天空の姫Ⅲ ~二人の皇子に愛された娘~



雪梨様は相変わらず侍女達に厳しく指導していた。


あ…。隠れなくてもいいんだったわ。今の私は法術で姿を隠しているんだから。


隠れている柱から出て雪梨の横を通りすぎる。


「ちょっと、あなた」


雪梨の声に反射的に立ち止まる。


「これを明日までに覚えておきなさい」

「はい。侍女長様」


後ろを振り向くと侍女に掟の書物を渡す雪梨がいた。


…あの書物…懐かしい。


侍女になり掟を知らないからと私も雪梨様に渡されたわ。最初はいじめられているのだと勘違いしたものだ。


書物を渡された侍女も嫌そうな顔をしている。


その顔を見て白蘭は口もとに笑みを浮かべた。


そして過去を振り返らないよう雪梨に背を向けると虹彩樹の庭に向かった。


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