天空の姫Ⅲ ~二人の皇子に愛された娘~
庭に足を踏み入れると同時に術が解けた。
虹彩樹の庭は相変わらず美しく。花は虹色に輝き甘い匂いを放っている。
花を堪能しようと庭をゆっくりと歩いた。
花がひらひらと舞い、空から虹が降っているかのようだ。
ここには思い出が多すぎる。
初めて紅蓮と出会ったのもこの場所。
そして初めて恋をしたのもこの場所。
想いが結ばれたと思ったのもこの場所。
死ぬ前に後悔したのもこの場所だ。
そのすべての思い出に紅蓮がいる。
…そうだった。兎月に虹彩樹を見せる約束だったわ。
思い出に浸りすぎて本来の目的を忘れるところだった。