天空の姫Ⅲ ~二人の皇子に愛された娘~
法術で根を持ち上げようとすると虹彩樹は嫌がるように体を揺らし、虹色の花が床に落ちた。
「…」
なんだか弱い者いじめをしているみたいで可哀想になってきた。
それに無暗に抜けば枯れてしまうかもしれない…。
兎月には悪いけれど虹彩樹をもっていくのは諦めましょう。
白蘭はため息をついた。
数千年もすれば忘れることよ。今は苦しくても、そのうち忘れられる。
そうしたら、この樹も心置きなく抜けるかもしれない。
兎月にはその時に虹彩樹を見せよう。
もう帰ろう。
庭の出口に向かい歩き出す。するとよく聞きなれた声が耳を撫でた。