天空の姫Ⅲ ~二人の皇子に愛された娘~
「どうしてだ?白蘭。もしかして月影に何か言われたのか?」
「…月影は関係ない。私が全て経験したことよ。あなたは忘却湖で私を殺した」
「…違う。私ではない」
紅蓮は首を横に振り無実を主張する。
「…なぜそのような事になったのかはわからぬ。だが必ず真実を見つけよう。私の想いは本当だ…白蘭。私は本当にそなたを愛しているんだ」
「…」
どこまでも変わらない彼に白蘭は涙を流した。
「…信じてくれ。白蘭」
「…信じられない」
冷ややかな声でそう言うと紅蓮の横を通り過ぎ虹彩樹の庭を後にした。
皇子宮についた白蘭は逃げるように部屋に入り一人泣いた。
悲しみに暮れる白蘭に兎がそっと寄り添い優しく言った。
「今だけ兎月のこと撫でてもいいぞ」
白蘭は兎月を抱きしめると顔をうずめ泣いた。