天空の姫Ⅲ ~二人の皇子に愛された娘~


「ある香の煎じかすを持っていたのです…。朱雀様は私にこの香の匂いに覚えがあるかと聞いてきたのです」

「それで?」

「それで、私は正直に言いました。魔后様の香だと。自ら調合なさるもので少量の術を仕込んで法術の弱い者の思考を鈍らせ惑わす作用があると…」


朱雀は何かを探していたのか?


「雪梨…。母上の部屋から香をもってきてくれ。すべてだ」

「かしこまりました」


紅蓮は頭を悩ませた。

考えれば考える程、おかしな点が多い。

なぜ突然、侍女を訪ねたのか。なぜ、侍女は死んでいるのか。

そしてなぜ、母上の香を持っていたのか…。

どこで手に入れたんだ。

母上は魔后だ。たとえ煎じかすでも手に入れるのは難しい。

母上が自ら調合する香なら、なおさら入手するのは困難だ。


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