天空の姫Ⅲ ~二人の皇子に愛された娘~
あの白蘭と過ごした人間界での数年は本当に幸せだった。
天后を陥れ、義弟を閉じ込め、実の父を殺してでも白蘭と共にいたい。
それだけあの娘には価値がある。
私は白蘭のためならばどんなことでもしよう。
明日、白蘭に会う。そのため今日は久しぶりに皇子だったころにいた宮で休むことにした。
月影が天宮に住むようになったことでずいぶん廃れてはいたが、庭に咲く鈴蘭だけは綺麗に保ってあった。
鈴蘭の世話をしていた兎が私に気づいて慌てて頭を垂れた。
「月影様…あっ。天帝陛下にご挨拶を」
「…」
久しぶりに聞いた兎月の声と姿。月影は一瞥すると法術で宮を綺麗にし扉を閉めた。