天空の姫Ⅲ ~二人の皇子に愛された娘~
朝議が終わり神が皆、下がっていく。
明日は戦だ。家族の仇がとれる。白蘭の瞳は力強かった。
「…いい眺めだろう。座り心地はどうだ?」
私がいることで残ったのだろう。天帝の座に座ったまま隣で月影が声をかけてくる。
「そうね…」
天帝と天后の座は天宮でも一番高い位置にある。朝議でもいつも他の神達を見下ろすような作りになっているのだ。
「八咫烏の時は誰かを見下ろすことなんて、とても考えられなかった。いつも誰かとは向かい合わせでしか話したことがなかったから今はとても妙な気分。神官の皆が遠いわ。」
「では、そう思った時は隣を見てくれ」
「え?」
「隣には私がいる。いつも同じ目線だ」
そう笑う顔はかつての穏やかな月影だった。
…私はこの戦が終わったら、この人の妻になる。そして天后になるのだ。
白蘭は静かに頷き、薄く月影に笑い返した。
「そうね。そうするわ」