天空の姫Ⅲ ~二人の皇子に愛された娘~
怒りを目に宿すと白蘭は水系術で剣を作る。
出来上がった氷の剣を手に取ると魔帝の首にあてた。
「私を殺すのか?」
「あなたが先に私の家族を殺したのよ」
剣を振り上げたとき魔帝が小さく呟いた。
「似ているな…」
ピタリと振り上げた手が止まる。
「よく似ている…蓬莱に…」
「母の名を呼ぶなっ」
「彼女は私が作った虹彩樹の花を綺麗と言った…だから庭を造ったのだ…」
記憶水晶の間で見た魔帝が脳裏によぎった。
母が綺麗だと言うと魔帝は満足げに笑い、数日かけて庭を造ったのだ。
「愛していたのだ蓬莱を」
天女の思いが残っていたのか、その言葉を聞いた瞬間、白蘭の目から涙があふれた。
「うるさいっ。うるさいっ。愛しているだなんて嘘よ!なんで母上をっ。父上を殺したのよ!」