天空の姫Ⅲ ~二人の皇子に愛された娘~
「あなたは玲心と天帝によって騙されているのです。おかしいとは思わなかったのですか?天帝がどうやって今の座を手に入れたのか知らないのですか?どれだけ多くの者を殺したのか知らないのですか?」
月影が多くの者を殺した?
「天帝は義弟である氷輪に何をしたのか知っていますか?あの男の優しさは偽りです!」
「違います!月影の優しさは偽りじゃないっ」
月影はいつも私に優しい。
人間界では一緒に生活をし、私の大怪我も何年もかけて付き添ってくれた。
歌舞伎茶屋が好きだと笑う穏やかな水のような人なのだ。
そんな月影の優しさが偽りであるはずがない。
「いい加減になさい!!!」
雪梨の声に白蘭は体をびくつかせた。
「いいですか。よく聞きなさい白蘭!あなたは確かに何もしらない。それが幸せなのかもしれません。しかし、あなたはその無知さゆえに魔界を攻め紅蓮様に剣を突き刺した」
「…」
「あと、ひと月あります」
「え?」
「紅蓮様はかろうじて生きています…」
紅蓮が生きている…。