天空の姫Ⅲ ~二人の皇子に愛された娘~
長い間牢に囚われ拷問を受けた氷輪。傷が完治したのは二十日後だった。
「兄上は完全に変わった」
「人は変わるものよ…」
「違うっ。悪い意味で変わったんだ。白蘭もおかしいと思っただろう?あんなに仲が良かった兎でさえ兄上はもう目も向けようとしない」
庭で鈴蘭を世話する兎月を見た。
「兄は権力を手に入れるため自分に都合のいい奴しか周りに置かない。白蘭、お前は天女だ。お前を娶れば天帝の地位はより確実になる」
「私を利用してるっていうの?氷輪…思い込みだわ」
「騙されているんだ白蘭は…。白蘭は紅蓮に殺されたと言っていたな。だから紅蓮の心臓を刺したと」
「ええ」
紅蓮の命もあと数日…。
「魔界の鳳凰は確かに好かないが、人間界で関わっていたからこれだけはわかる。あいつは白蘭を殺したりはしない。」
「…」
月影を疑いたくはない。でも心のどこかで疑う自分がいる。
「確かめたらどうだ?天界には記憶水晶の間がある」
「記憶水晶の間…」
一度だけ月影に連れて行ってもらった。二千年前の出来事をそこで知った。
確かに、あそこなら確かめられる。月影の疑いも証明できる。
「氷輪。記憶水晶の間に連れて行って」