天空の姫Ⅲ ~二人の皇子に愛された娘~
はじめて会うはずなのに惹かれる。
どこに行ったのかと虹彩樹の庭を探すと彼女の姿があった。庭を歩く彼女は先ほどの素朴な衣ではなく背には純白の翼をたずさえていた。
「待て」
ゆっくりと振り向く、その美しい顔は涙し悲しみに暮れているようだった。
「なぜ泣いている」
涙を見ると紅蓮の心も痛んだ。彼女は何も答えなかった。
「泣かないでくれ。そなたが泣くと私まで悲しいのだ…」
近づき涙を拭うと彼女は私の名を呼んだ。
「…紅蓮」
酷く懐かしい気分だ。ずっと呼ばれたかった。側にいたかった。守りたかった。心の穴は彼女なのだと紅蓮は気づいた。
「どうした?」
優しい声で聞くと同時に胸に鋭い痛みが走る。視線を彼女から自分に向けると心臓に氷の剣が刺さり血が衣を赤く染めていた。
「なぜだ?…白蘭」
そうだ。彼女の名前は白蘭だ。私の最愛の人だ。
問いかけるも目の前が暗くなっていく。
最後に見た白蘭はやはり涙し、私は暗闇の中に落ちて行った。