天空の姫Ⅲ ~二人の皇子に愛された娘~
月影は即答するが、白蘭は全てを知ってしまったのだ。
恐ろしい月影を。
天后を罠にはめ、謀反を起こし、兄を慕っていた氷輪を閉じ込め酷い仕打ちをした。
長年連れ添った兎は目もくれず、玲心とは手を組み、友である紅蓮を私に殺させた。
以前の善良さはないのだと知ってしまったのだ。
「天女の私を利用したいからじゃなくて?」
「何を言う…」
月影は私の手を取ると言った。
「誰に何を言われたのか知らないが、私はそなたの事を利用したことは無い」
「本当に?」
「本当だとも」
月影が穏やかに笑う。初めて会った時のように。
「じゃあ、なぜ黙っていたの?」
「え?」
「私を殺したのが玲心だってこと…紅蓮じゃなかったわ」
「まさか…見たのか?知ったのか?」
月影の顔から笑顔が消えていく。