天空の姫Ⅲ ~二人の皇子に愛された娘~
「兎月!」
兎はもう何も話さなかった。
しかし兎月は白蘭をせかすように頭突きをした。
まるで簪を挿してもらったあの時のようだった。
早く行けって言っているのね…。
「兎月。私も大好きよ」
兎の毛皮を撫でると兎月は笑い、氷輪を助けるために牢に向かっていった。
それを見送った白蘭も天界を後にする。
…皇子宮に戻ることはもうない。
鬼神の父上と天女の母上の思い出の宮。
そして月影と私、兎月の思い出の宮。
その思い出と美しく咲く鈴蘭を残し紅蓮の元へ白蘭は向かった。