天空の姫Ⅲ ~二人の皇子に愛された娘~
繊細に折られたその衣装は、龍の鱗の様に美しく贅沢な品だった。
「…明日になればこの衣装を着た彼女が見れるはずだった…。」
美しい白蘭。可愛い白蘭。この衣装を着た彼女がどれだけ綺麗か何度も考えた。
明日になればすべてが叶うはずだった。
それなのに!
衣装を撫でる手に力を籠めると、龍の爪が食い込み簡単に引き裂いた。
幼い頃から何も持っていなかった。
だから自分を守るために法術と知識を身に着けた。
生きるためには謀反人の皇子は善良で無欲でなければならなかった。それでいいと…そうするべきなのだと思っていた。
しかし幼い頃、魔界で紅蓮と出会った時、思ったのだ。
なぜこんなにも差があるのだと。同じ歳で同じ皇子。
条件は、ほとんど同じはずなのに紅蓮は全てを持っていた。