天空の姫Ⅲ ~二人の皇子に愛された娘~


それなのに、またもすんなりと紅蓮は手に入れたのだ。


何もない私から奪ったのだ。


白蘭を。


お前はもう何もかも手にしているじゃないか。なぜ何も持たない私から最も大事な物を奪うのか。


「紅蓮…」


月影の目から憎しみと恨みの籠った涙が一筋流れた。


かつてこれほどまでの激しい感情を覚えたことは無かった。


紅蓮は言った「婚姻を阻まれれば無理やりにも奪え」と「その法術がついている」と。


いいだろう。紅蓮。


無理やりにも奪ってやる。


そなたが私から奪ったように…。


奪われたら取り戻せばいいのだ。


玲心が死に血の盟約は消えた。紅蓮をこれで心置き無く殺すことが出来る。


月影の龍の目が涙しながら鋭く光る。


触れてしまったのだ。


龍の逆鱗に。







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