天空の姫Ⅲ ~二人の皇子に愛された娘~
痛む翼で必死に空を飛ぶ。
いつか記憶水晶の間で見た戦場へ向かう天女の母上を思い出す。
私のように翼を黒くし愛する者の元へ飛び立った母上。
母上もこのような気持ちだったのですね…。
天女の心のせいなのか、愛する人が争うからなのか白蘭は戦場へ急いだ。
戦場に近づくにつれ新鮮な血の匂いが漂ってくる。
必死に翼を動かすと戦の中心が見えてきた。
「っ!?」
その光景に息を吞む。
白豹と黒豹が地で争い。
その爪が肉を裂き、いたるところで悲鳴が上がる。
兵士達も法術を放ちお互いの敵を蹴散らしている。
そして空からは朱雀軍がまるで燃える赤い矢となり、地に突っ込んでいく。