天空の姫Ⅲ ~二人の皇子に愛された娘~
気鋭が用意したのは天后の部屋だった。
以前の天后の趣味だった派手な装飾はすべて外され、豪華ながらも穏やかな淡い色を使うことで落ち着いていた。
寝台に白蘭を下し顔を眺める。
美しい顔に伝う涙をそっと拭った。
「陛下…顔色が優れませんよ…何かあればお呼びします」
気鋭が天帝の法術の揺れを感じ取ったのか心配そうに声をかけてくる。
「平気だ…しばらくすればもとに戻る」
月影は白蘭から視線を逸らさずにそう答えた。
「いいえ…今では天帝なのですよ。お身体はいたわってください。私が厳選した侍女達がついていますので心配いらないですよ」
数人の侍女が入ってきて静かに礼をした。
「わかった。では少し休む。目が覚めたらすぐに呼ぶように。よいな?」
「かしこまりました」
白蘭…。目が覚めたら、きっとそなたはあの男を想いはしないだろう。
数千年もすれば魔界や人間界のことなどすぐに忘れる。私が側にいよう。私と共に生きよう。永遠に。