天空の姫Ⅲ ~二人の皇子に愛された娘~


「犯人は?」

「まだ調査中だ」

「そうですか…」


母上…。無念だったことでしょう。

紅蓮は母を思い一筋の涙を流した。

その様子を見た、魔帝は床に落ちていた扇子を拾うと紅蓮に渡した。


「形見だ…そなたが持て」


母上がいつも持っていた扇子だ。

紅蓮は受け取ると扇子を握りしめた。


「これで良く分かっただろう。魔宮の恐ろしさを。食わなければ食われる。皇太子として無様な様を晒すのはよせ。下々の者が見ている」


無様な様とは、白蘭を亡くした時の様子だ。

虹彩樹の庭で泥酔し政務を何年も怠った。それを魔帝はやめろと言ったのだ。

母親を亡くしたことで今回もそのような状況にならないか不器用ながらも魔帝は心配したのだ。

魔帝の発言は誤解されやすい。

しかし紅蓮にはその思いはきちんと届いていた。



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