天空の姫Ⅲ ~二人の皇子に愛された娘~
どうでもいい。
私は紅蓮に一度殺されたのだ。そして人間界に行き、記憶を失くしながらまた馬鹿みたいに私はあの男を愛したのだ。
『「面白そうだと思って側に置いた、私の心ない言葉に喜ぶ様は実に愉快だったぞ。」』
忘却湖で言った紅蓮の言葉だ。
そんな彼のことを知らず人間の私に一喜一憂し、彼はまたも私を欺き愛を囁いた。
何も知らず愛していると口にした私は、さぞかし滑稽だったことだろう。
悔しさで奥歯を噛み両の手を握ると爪が食い込み血が滲む。
憎しみに囚われると、長年天女によって抑えられていた鬼神の力が暴走し真新しい調度品を容赦なく壊した。