天空の姫Ⅲ ~二人の皇子に愛された娘~
以前の私だったら大騒ぎしたことだろう。天宮を子供の様に駆け回り花を愛で自由に空を飛んだだろう。
「…八咫烏の白蘭が懐かしいわ」
「白蘭様?」
ふと、呟いた声に侍女が反応した。
今の白蘭には侍女が十人もついてくる。湯あみや衣に着替えるときはもっと多くの人数がつく。
「…何でもないわ」
歩みを進めた。
八咫烏の時に父上に真の姿で飛び回ったことで怒られたわ。特に新夜祭の前日に魔都で兄上と飛んだ時は一刻も跪かされた。
今ならその理由がよくわかる。
助けてくれた兄上も明明もそして父上も、もういない。皆死んでしまった。