同期ドクターの不埒な純愛ラプソディ。
時には覚悟を決めて
窪塚は、私の声を聞き入れるやいなや、囲い込んでいた腕にぎゅっと力を込めて私の身体を胸に抱き寄せ腰を押しつけるような体勢をとった。
そうして続けざまに、私の身体を開いた足の間に挟んで腰を落とすと尚も擦り寄ってくる。
「どういう意味って、こんなにくっついてたらわかんだろ?」
お陰で、耳元を擽るようにして意味深なことを囁かれるまでもなく、窪塚の下半身が既に臨戦態勢であることがありありと伝わってくる。
「本当はわかってるクセに。鈴ちゃんやらし~」
私の頭が現状を把握したと同時に、追い打ちのように窪塚の意地の悪い声音が思考に割り込んできた。
途端に羞恥を覚えた私が真っ赤になって苦し紛れに声を放つも、そんなものに威力があるはずもなく。ましてやなんの抵抗にもなっていないのだった。
「////ーーバッカじゃないのッ! もー知らないッ!」
それどころか、こんなにも私のことを求めてくれているんだ。だったら一刻も早く窪塚に応えてあげたい。こうやって無駄な攻防を繰り広げるよりも、早く窪塚と一緒にめくるめく甘いひと時を過ごしたい。
ついさっきまで窪塚のために料理の準備をと思っていたはずが、いつしかそんなことを思ってしまっている。
窪塚のゴッドハンドもさることながら、やっぱり一月もの間、窪塚と会いたくとも会えずにいたことが相当堪えているようだ。
だからといって、素直になりきれない可愛げのない私は、おしとやかにしおらしく、窪塚の胸にしなだれかかって甘えるなんてことはできないのだけれど。
でもそういう私の心情など何もかも見透かしているのだろう窪塚は、その都度その都度、私のことをちゃんと導いてくれるのだった。
「おいおい、そんなに怒るなよ。こうやって鈴の匂い嗅いだだけでリラックスできてる証拠なんだしさ。それに、久々に鈴とゆっくり過ごせるのが嬉しくてどうしようもなくて、はしゃいでんだからさ。な?」
それだけじゃない。
窪塚は、いつもの如く、照れ隠しで少々変態チックな言い方ではあるものの、こうして私の欲しい言葉をピンポイントでとびきり甘やかな優しい声音で囁きかけてくれるのだ。
二年前、一夜の過ちがきっかけとなって、私たちはセフレなんて言う不埒な関係にあった。
けれども気づかなかっただけで、それ以前から窪塚のことを意識していた私は、ずいぶん前、おそらく医大の頃から窪塚のことを好きになっていたらしく。
二年という交際期間を経た今では、窪塚のことをその頃とは比較にならないくらい好きになってしまっている。
そんな私にとって、窪塚からの言葉は途轍もない威力を孕んでいるのだろう。
どうにも窪塚に弱い私は、呆気ないほどにいともたやすく、窪塚のことを容認してしまうのだった。
「別に、怒ってないし」
それがどうにも悔しくてしょうがなくもあった。
窪塚はいつも口では情熱的に、私のことを『好きだ』『愛してる』『可愛い』とか言ってくれるけど、実際には、私の方ばっかりが好きな気がするからだ。