同期ドクターの不埒な純愛ラプソディ。
私の言葉を聞き終えると、吃驚眼で見つめていた窪塚はいつしかムスッとして、面白くないって言うような表情に変わっている。
私が窪塚の予想外な反応に首を傾げつつも一息に言い切ったことで、乱れた呼吸を整うべく、ふうと大息をついた刹那、窪塚が放った低い声音が耳に届いて、窪塚の心情を知ることとなった。
「バカは鈴だろ。言っとくけどな、俺は鈴と違って初恋も付き合ったのも鈴が初めてだったんだ。そんな俺が鈴のこと捨てる訳ねーだろ。冗談でも、そんなこと二度と言うな。それから、俺は絶対禿げたりしねーからな」
どうやら窪塚にとっては、私の初恋相手である優くんと元彼だった藤堂の存在が未だに引っかかっているらしいこと。
そして『禿げる』という言葉を聞き流すことができなかったらしいことがよーく理解できた。
前者に至っては、優くんは子供の頃のことだし、藤堂とはただのお試しだったのだし、そんなこと気にする必要などまったくない。
後者に関しては、何度か実家にお呼ばれしているので、窪塚の父親も祖父も禿げたりしていないのは知ってるし、気にする要因はないと思うが、気になるところではあったのだろう。
がしかし、私にとってはどっちも取るに足らないことだ。
そのため私は、窪塚の言葉に唖然としてしまい、思わず漏らした言葉も笑いを含んだものとなってしまうのだった。
「……え? 『鈴とちがって初恋も何もかも』って。まさか、まだ優くんや藤堂のこと気にしてるの? それに、禿げないって……もう、圭ってばヤダなぁ。そんなの言葉の綾でしょうが」
どうやらそれがいけなかったらしい。