同期ドクターの不埒な純愛ラプソディ。
微睡みの中の着信 #3
暫し驚いたような表情で私の顔を瞠目したままでいた窪塚がなにやら勘案する素振りを見せてすぐ、表情から一切の感情が霧散した。
お得意のポーカーフェイスを決め込んだ口元には、微かに黒い笑みを湛えている。
一体、どんなことを命じられるのかと、緊張感に襲われ思わず喉をゴクリと鳴らしてしまう。
そこに窪塚から実に淡々とした抑揚もぬくもりも感じられない冷ややかな声音で質問が投下された。窪塚の口から、
「だったら、俺がフェラして欲しいって言ったら、やってくれんの?」
「////ーーッ!?」
具体的かつ卑猥な単語が飛び出してきたことで、瞬時に想像してしまい、覚悟を打ち砕くようにして、津波のような勢いで羞恥が押し寄せてくる。
今まさに窪塚の分身に触れようとしていた手だけでなく、全身を凍りついたように硬直させてしまうのだった。
勿論それだけでなく、顔も身体も発火しそうなほど熱せられている。
何が『なんでもするから機嫌直して』だ。
ちょっと卑猥な単語を耳にしただけで、こんな有様だなんて、本当に情けない。
窪塚もそんなことになるだろうと思っていた。と言わんばかりに、大笑いしてきて、情けない私に助け舟まで出してくる。
「ハハハッ、冗談だっての。鈴にそんなことさせるわけねーじゃん」
元来、気が強く、負けず嫌いで、可愛げなど持ち合わせていない私は、ここへきてようやく本領発揮するのだった。
「////……い、いいよ。圭がして欲しいっていうなら、なんだってしてあげたいって思ってるから」
元々持ち合わせていた意地もあるが、『窪塚にならなんでもしてあげたい』そういう気持ちがあるからこそ出た言葉だ。
「おっ、おい、こらッ。やめろってッ。冗談だっての。ごめん。俺、マジで鈴にはそんなことさせたくねー。ってか、して欲しくないんだ」
だから、いくら窪塚に止められようが、これだけは譲れない。
私にとって窪塚がどんなに大事な存在かを知ってもらうためなら、手段なんて選んでいられない。
今ここで怖じ気づいたり、怯んだりしたら、取り返しのつかないことになりそうで、怖くてどうしようもない。
どうしてそんな風に思うのかは不明だけれど、おそらく一生添い遂げたいと思っている気持ちの表れなのだろうと思う。
今の自分を言葉にするなら、猪突猛進。
窪塚の言葉に異議しかない私は、強行突破しようとする私の手首をぐっと掴んでいる窪塚になおも食い下がった。
「して欲しくないってどういうことよ? 一瞬でもして欲しいって思ったから、口にしたんでしょうがッ! いいから、さっさとやらせなさいよッ!」
そこでようやく窪塚の本心を知ることとなるのだった。
「そんなことさせたら、鈴の親父さんに顔向けできねーよ。否、そんなことはどうだっていい。今さらだって思われるかもしれねーけど、鈴にはずっと綺麗なままでいて欲しいんだ」