同期ドクターの不埒な純愛ラプソディ。
噂の真相
あれからすぐに、窪塚に連れられて脳外の医局と同じフロアにある小会議室へと移動した。
二十畳ほどの広さの小会議室の中央に大きな長方形の机が六つ集めて置かれている。
机をぐるりと取り囲むように置かれている椅子に隣り合わせで座っている窪塚が広げたお弁当箱を覗き込んだところで興奮気味に感嘆の声をあげているところだ。
「おー、すっげー。俺の好物ばっかじゃん」
「前にお呼ばれしたとき、圭のお母さんからレシピ教わってたの。上手くできてるといいんだけど」
自分の好物ばかりがぎっしりと詰まったお弁当箱を前に、嬉しそうに笑顔の花を咲かせている窪塚は小さな子供みたいに目をキラキラと輝かせている。
こんなに喜んでもらえるなら、もっと早く差しれしとくんだったなぁ。
これを機にもっともっと料理のレパートリーを増やして、週に一度は差し入れしてみようかなぁ。
例の噂のことなどすっかり忘れてそんなことを思いつつ、喜色満面の窪塚の横顔を眺めていた。
「お袋のなんか比べもんになんねーくらいメチャクチャうめー。こんな美味い肉詰めピーマン、初めて食った」
「もう、口ばっかりなんだからぁ」
「マジマジ」
大袈裟なぐらい喜んで、見る間に平らげていく窪塚の想像以上の好感触にほくほく顔で見つめていた私は、あっという間に完食した窪塚のこの声でようやく、ここに来た本来の目的を思い出したものの。
「あ~、メチャクチャ美味かった。ごちそうさま。鈴も忙しいのに、わざわざありがとな」
「ううん。お粗末様でした」
さっきの皐さんの様子からして、例の噂の信憑性も薄れてしまった今となっては、窪塚にわざわざ問い詰めるまでもないかなと思い始めていた。
もう少し窪塚と一緒にこうしていたいけど、仕事中だしそうもしていられないと思い、お弁当箱を片して早々に退散しようと思っていると、急に窪塚にぎゅぎゅうっと胸に抱き寄せられて。
「鈴には負担かけたけど、メチャクチャ嬉しかった。最近、色々あって、時間がなかなかとれなくて、ほったらかしでごめん。ご両親に挨拶に行くまでにはちゃんと時間作るからさ。それまで待ってて欲しい」
いつになく真剣な声音を響かせる窪塚の様子に、何か違和感のようなものを覚えてしまった。