同期ドクターの不埒な純愛ラプソディ。

 すると事後処理をしてくれていた圭の動きがピタリと止まった。

 そしてすぐに私の身体をぎゅうぎゅうに抱き竦めてくる。

「……さっきから可愛いことばっか言いやがって。俺のことどこまで煽ったら気が済むんだ」

 正直意味がわからなかった。さっきの余韻と羞恥のせいで頭は大混乱なのだから無理もない。

 思わずぼやいてしまうのだった。

「……まだ三日もここに連泊するのに恥ずかしすぎて死ぬ」

 けれどもこの言葉は、やぶ蛇となってしまう。

「ハハッ、なんだよ。そんなこと気にしてたのか? 新婚なんだからこんなの普通だろ。『ああ、またか』くらいのもんだろきっと。それより、俺の可愛い奥さんはまだまだ余裕があるようだから、今度は俺自身で目一杯可愛がって、羞恥なんてなくしてやんねーとな」

 未だ羞恥に塗れて顔を手で覆っている私の耳元に、圭が意味深な言葉を囁いてきた。

 恐る恐る指の隙間から様子を窺い見る。

 その言葉の意味を私が理解する前に、圭がバスローブを豪快に脱ぎ去った。

 見慣れたはずの細身ながらに鍛え抜かれた圭の逞しい裸体に目を奪われる。

 広くがっしりとした肩、なだらかに隆起した厚い胸板。

 まるで芸術的な彫刻のように、綺麗な陰影が浮かび上がっている六つに割れた腹筋。

 不意に圭の視線とバチッとかちあい、我に戻った私は羞恥を覚え視線を逸らす。

 そこに圭が独り言ちるようにして零した言葉に、更に羞恥が煽られる。

「もう三年も付き合ってて、結婚までしたってのに。可愛い反応見せるとこ、変わらないよな。鈴のそういうとこがたまんねぇ」

 羞恥に身悶えわなわなと慄いていると。

 すーと伸ばされた圭の手が私のバスローブの腰紐をするりと解く。

 圭の眼前に、ブラとショーツだけを身につけた身体が晒された。

 思わず身体を隠そうと顔を覆っていた手を下げようとして、圭にまたもや阻まれる。

 見る間にブラを外され、ショーツも足から抜き取られ、ベッドの下へと放たれた。

 片手で器用に両手首を頭上で縫い止めるように固定され、何も纏っていない身体をマジマジと見下ろされる。

 それだけで、散々解された下肢の中央からとろりとした熱いものが滲み出てしまう。

 何か言われそうでゴクリと喉を鳴らしたところへ、ゆっくりと間近に迫ってきた圭が首筋に顔を埋めてくる。

 滑らかな皮膚の感触を味わいながら這わされた舌と唇とが、触れたところからしっとりと湿り気を帯び冷ややかな感触がする。

 ゾクゾクと電流のような痺れが背筋を這い上がっていく。

「すっげー綺麗だから、隠さずに全部見せろ。もう鈴の何もかもすべては俺だけのものなんだから」
「ーーッ!?」

 そんなタイミングで宣言され、『所有印である証』を身体に刻み込むように、キツく素肌に吸い付かれた。

 チリチリと焼けるような感覚がする。

 それは首筋からはじまり、鎖骨や鎖骨の括れ、胸やおへそというように、全身に及んだ。

 やがて自分の刻み込んだ『所有印である証』を満足げに見遣ると、ハッとした圭が不安げな声で謝罪し気遣ってくる。

「……ごめん、我をなくしてた。痛くなかったか?」

 その豹変ぶりに呆気にとられてしまった。

 けれどそれは同時に、私のことしか見えていないことの何よりの証拠に他ならない。

 圭の見せる何もかもが私の胸をときめかせ、熱くする。

 それはこれまでもそうだったように、これからの人生においても、圭だけだ。

 そのことを少しでも圭に伝えたい。

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