同期ドクターの不埒な純愛ラプソディ。
〜Epilogue〜

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 ー三年後ー

 シンガポールの街並みを眺望できる高層マンションの高層階にある窪塚家は休日の朝を迎えていた。

「ねぇ、圭ってば。起こしてって言っといていつまで寝てる気?」
「……う、うん。もう、ちょい」
「もう、さっきからそればっかりなんだからぁ。まぁ、休みだからいいけど」

 夫である圭に、寝る前に明日も仕事に出かけるのと同じ時間に起こして欲しいと頼まれていたのに、何度起こしてもまだ眠いのか、布団から出てこようとしない。

 といっても休日なので、ゆっくり休ませてあげようと二度目で起こすのを断念し、寝室からリビングダイニングへと戻ろうとしたところで、いつの間にか着いてきていたらしい、一人息子の匠《たくみ》・二歳により阻まれた。

 踵を返そうとしていた足に抱きつかれてしまったのだ。

「わぁ、吃驚したぁ。匠、向こう行ってようか? パパ、まだ眠いみたい」
「え~、パパとあしょびたいのにいー!」

 平日は圭が仕事でいないため、休日になると、近頃色々と主張してくるようになってきた匠の『パパがいい~』が炸裂するのが最近の悩みの種となっている。

 なんとか匠の目を他に向けようと思考を巡らせる。

『なんでも聞いてあげる』に弱い匠なら、すぐに納得してくれるはず。そう思い誘導したのだが……。

「パパが起きるまでなら、匠の言うことなんでも聞いてあげる。だからね、向こうでママと遊んでくれる?」
「うん。ママが、およめしゃんになってくれるんだったらいいよ~!」

 すぐに元気よく聞き入れてくれた匠がそういった刹那、背後のベッドから凄い勢いで起き上がってきた圭に、後ろから抱きすくめられた。

 ーーそういえば結婚する前にもこんなことがあったような気がするなぁ。

 そんなことを思っていると、肩に顔を乗っけた圭が、不思議そうに私たちのことを見上げてキョトンとしている匠に向けて。

「こーら、匠。ママはパパのなんだからな、絶対ダメだ!」

 まだ喋るのもたどたどしい幼い子供相手に、なんとも大人げないことを言ってのけた。

 途端に、ムッとした匠がごね始める。

「えー、ヤダよ~。ママはぼくのだもんっ!」

 するとすかさず圭が、ごねる匠のことをヒョイと抱き上げ。

「ほーら、ママより大きくなったぞ~。凄いな匠~」
「わぁ~、ホントだぁ。しゅごいしゅご~い」

 肩車でご機嫌を取り始めたことによりなんとかこの場は丸く収まった。

 普段はとっても優しい夫であり父親である圭は、以前よりも頼もしくなったように思う。

 そして何より嬉しいのが、私のことを以前同等に溺愛してくれていることだ。

 けれど溺愛してくれているお陰で、私たちの可愛い息子にまで嫉妬してしまう始末。

 匠のことを肩車して、楽しそうにあやしている圭のことを眺めながら。

 ーーこれ以上に幸せなことはないなぁ。この幸せがずっとずっと続きますように……。

 ひっそりとそんなことを願っていたのだった。


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〜forever〜

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