同期ドクターの不埒な純愛ラプソディ。
神の手?
一緒に過ごす夜への期待感から胸を高鳴らせている……なんてことを窪塚に気取られたくなくて、可愛げのない反応を示した私の手元を尚も窪塚は覗き込んでくる。
「見てるだけなんだし、いーだろ? 別に。手伝うしさぁ」
それだけじゃない。
怒った私のご機嫌を取ろうとしているのか、私のハーフアップにしている髪を優しく耳にかけつつ、露わになった項にそうっと唇を這わせて口づけてきた。
「////ーーひゃっ!? あ……アンタはただ食べたいだけでしょうがッ」
思わず大袈裟な反応を返してしまったが、ここで屈してしまえば、折角、料理が趣味の父から教わった、完成間近の渾身のラタトゥイユが仕上がらない。
それに、ブロッコリーを使ったホットサラダだってまだできてないし、それにかけるチーズたっぷりのソースだってまだだ。
普段、仕事の忙しさの所為で出前や出来合いのものばかりしか食べていない窪塚に、少しでも野菜を摂取してもらおうと思ってのことだった。
出汁巻き玉子とラタトゥイユという組み合わせが合わないという意見は、受け付けない。
何故なら、窪塚の大好物というのに加え、私の唯一の得意料理だから出汁巻き玉子は絶対に外せないし、少しでも小洒落た料理を用意しようと思ったからだ。
これまでの経験から、毎回なし崩し的に、夕飯よりも先に食されてきた。
そしてそのたびに、毎回のように使い物にならなくされてしまった私の代わりに、私の指示により窪塚が完成させた料理を口にしてきたのだから尚更だ。
兎に角、こんなことで中断されては堪らない。
私は他でもない窪塚のために、必死な思いで踏ん張っていたのだ。