同期ドクターの不埒な純愛ラプソディ。

 それなのに……。

 窪塚ときたら、私のことを背後からスッポリと逞しい腕の中に囲い込んできて。

「んな訳ねーじゃん。こんな可愛い反応する愛おしい彼女である鈴とこうして一緒に過ごしたいからに決まってんだろ」

私の首筋に顔を埋めてくると、あたかも猫が甘えてくるようにスリスリと頬を擦り寄せながらに、甘えた口調で私の鼓膜と心に揺さぶりをかけてくる。

 二年前に本物の恋人同士になってからというもの、窪塚は、こうやってストレートな言葉で、いつもいつも私のことを惑わせてきた。

 そのたびに、舞い上がってしまう私は呆気なく窪塚のことを受け入れてきたのだ。

 けど、もうその手には乗らない。今日こそは踏ん張ってみせるんだから。

 そのつもりだったのだが……。

「……調子いいことばっかり言ってもダメ。フンッ!」
「そんなに怒んなって。つっても無理だよな。最近、忙しくて鈴に寂しい思いばっかさてるもんな。ごめんな」
「だから、そういうのは時間の無駄だってば。それに、別に寂しい思いなんてしてないしッ!」
「なんだよ。寂しい思いしてんのは俺だけだったのかよ」
「そんな訳ないでしょうが……バカ。フンッ!」
「あ~あ~。俺、ホントにガキだな。鈴の気持ち試すようなこと言って怒らせてばっかで。けど、鈴からバカって言われるの俺、好きなんだよなぁ」
「はっ!? 何それ? なんか変態みたいなんだけど」
「ハハッ、そうかもなぁ。けど、俺をそんな風にしたのは鈴なんだからさぁ、責任とってもらわねーとなぁ」

 いつもの如く、窪塚となんやかんや言い合っているうち、お決まりのように、話が可笑しな方に傾き始めてしまっていて。

「……ど、どういう意味よ?」

 嫌な予感しかしないながらも、毎度のことながら、お決まりのセリフを口にしてしまう私は、私以上に私の性質を知り尽くしている窪塚の掌の上でいいように転がされてしまっているのだからどうしようもない。

 そしてそうなってしまうことに対しても、満更でもないどころか、嬉しいなんて思ってしまうのだ。

 恐るべし窪塚のゴットハンド。

< 9 / 74 >

この作品をシェア

pagetop