私、今度こそあなたに食べられません! ~戻ってきた俺様幼馴染ドクターと危ない同棲生活~
去っていく壮汰さんの背中を見つめつつ、私はそんなことを考えていた。
そのとき、鈴鹿先生と栗山先生が一緒に食堂にやってきた。
「あ、会議終わったんですか」
「えぇ。一緒にいい?」
「もちろん」
鈴鹿先生は私の隣に、栗山先生は私の前に座る。
鈴鹿先生はまっすぐ前を見つめると、
「さっき話してたのって、病院の外科の熊岡先生じゃない?」
「鈴鹿先生もご存知なんですか? そうです。昔、会ったことがあって……修の同期なんです」
「へぇ」
鈴鹿先生はそう言うと、なんだか微妙な顔をして続ける。「あの先生、手が早いから気を付けた方がいいわね。別名『人のものほど燃えるタイプ』」
―――人のものほど燃える? 手が早い? ……まさか。
「え? まさか、そんなことないですよ! めちゃめちゃいい人ですよ!」
思わず叫ぶように言うと、その迫力に押されたのか鈴鹿先生が驚く。
「そ、そうなの」
「そうです」
「ごめんね、変なこと言って」
鈴鹿先生はそう言って、私も、すみません、と頭を下げる。
それから少し雑談をして、私は一足先に研究室に戻った。
***
私が去った後、栗山先生がぽつりと、
「さっきの熊岡先生の話し、本当ですか?」
「有名だったのよ。たぶん、今も……。ちょっと心配ねぇ」
と話していたのは私には知る由もなかった。
***