私、今度こそあなたに食べられません! ~戻ってきた俺様幼馴染ドクターと危ない同棲生活~
その時。
「あーあ、また救急に駆り出されてるのか」
男の人の声が後ろから聞こえて、振り返ると、壮汰さんがそこにいる。
スーツで鞄を持ち、帰るところらしい。
「壮汰さんも帰りですか?」
「当直開けて結局今まで。くるみちゃんは、今帰り?」
「はい」
「ここ通り道なの?」
そう聞かれて私は恥ずかしくなって目を伏せる。
「……えぇっと、なんとなく……通りたくなって」
「はは、そうか」
その理由を悟られた気がして、さらに恥ずかしくなった。壮汰さんは微笑んで、続ける。
「今、救急の先生が一人、訴えられるかもしれなくてね」
「え?」
そんなの全然知らなかった。
病院のそう言った類の情報は案外回ってこないもので、特に、裁判が起こる前に和解する案件もあるから耳に入ってくるのもほんの一部だ。
「まぁ、知る限りこっちの過失はないみたいだけど。病院長としては、これ以上問題が起きないように、間違いのない医師に多くを任せたい」
そう言って壮汰さんは救急搬送口を見た。