私、今度こそあなたに食べられません! ~戻ってきた俺様幼馴染ドクターと危ない同棲生活~

 そんなの初めて聞いた。
 おじいちゃんもおばあちゃんもそんなこと言ったことなかったし。

「ほんとよ。くるみが生まれたおかげで、また実家との仲は戻ったけどね」

 私が思わず父を見ると、父は、一つ咳をした。

「付き合ってた時ね。父さんは先にもう就職してて、転勤になった。私はどうしてもついていきたいって言ったのよ。私は、大学入ってすぐだったけど大学辞めて無理矢理ついていった。それで結婚したの。知らなかったでしょ」

 私は言葉に詰まる。
 母はにこりと笑って続けた。

「そんなに裕福な暮らしではなかったけど、もちろん幸せだったわよ。でも、父さんが気にしてたのよね、ずっと」

 母は父の方に目を向けて微笑む。

「選ばなかった方の人生なんて、別に後悔なんてないのよ。でも、そうされた相手はずっと必要以上に引き摺るものよねぇ」

 私はその話がまるで5年前の話だと思ってしまった。

 5年前、私はどうしても修についていきたかった。大学を辞めても。
 血は争えないというが、その通りだ。
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