私、今度こそあなたに食べられません! ~戻ってきた俺様幼馴染ドクターと危ない同棲生活~

 次の日は金曜日。

 なんとなく落ち着かなくて、終業後に鈴鹿先生のお誘いに乗ってお酒を飲んで気持ちを落ち着けて帰ろうと思っていたけど、鈴鹿先生は突然会議が入ってしまい、その計画はとん挫した。

 修も遅いだろうしなぁ……と思いながら、なんとなく病院の方を通ってみると、正面側から、白衣を着た壮汰さんが退院する患者さんとともに出てきていた。

 患者さんは大柄の男性で、そんな人が、松葉杖をつきながら、何度も何度も熊岡先生ありがとうございました、と頭を下げている。
 それを見送っている壮汰さんの表情は明るかった。

 私はその患者さんが見えなくなると、壮汰さんに近づいて声をかける。すると壮汰さんは珍しく本気で驚いた様子で私を見て、それからあたりを見渡していた。

「……そんなに驚かなくても」

(私は幽霊か何かですか……? っていうか周りに何かいるの……?)

 そう思って壮汰さんを見ると、壮汰さんはきまり悪そうに頭を掻く。

「いやー、世の中には、触れていいものと触れちゃいけないものがあるんだと思ってね」
「はい?」

 私が首を傾げると、壮汰さんは苦笑して、口を開く。
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