私、今度こそあなたに食べられません! ~戻ってきた俺様幼馴染ドクターと危ない同棲生活~
壮汰さんは少し驚いた顔で私を見た後、ため息をついた。
「だから落とせる気がしなかったんだろうな。医師だからって無条件に寄ってこないし。くるみちゃん、いくらアプローチしても気づきもしないし。相談乗るふりして近づいても転ばないし。なんなら、俺を男としても見てないのよくわかる」
壮汰さんは言う。
壮汰さんは男の人というのは分かっているつもりだけど、言っている意味がよくわからなかった。
「……ええっと?」
「くるみちゃんさ、人を好きにはなりやすいのに、全然惚れっぽくないんだよね……。それ珍しいと思うよ。普通思うでしょ? 好きな人いても、他の人にどきりとするとか」
私がまた首を傾げると、壮汰さんは笑って続けた。
「それくらいキミも、猪沢のことしか見えてないんだよ」
最近になって分かった修のことを本当に好きだと思うような気持ちは、確かに修以外の人に対して思ったことはなかった。
これからもきっとないだろうな、と思う。
なにせ、20年以上一緒にいた修に対してすら初めて持ち始めた感情だったから……。
そんなことを思っていると、壮汰さんは、ハハ、と楽しそうに笑う。
「これは確かに落とすのに長くかかるわけだ。ま、勝算のない勝負をするほど、俺はバカじゃないし、猪沢は怒らせると怖いしね。今回は白旗だ」
壮汰さんは、じゃあね、と言って手を振り、病院内に戻って行った。
「……どういうこと?」
私は首を傾げて、壮汰さんの後姿を目で追っていた。