私、今度こそあなたに食べられません! ~戻ってきた俺様幼馴染ドクターと危ない同棲生活~
「本当は親の気持ちなんてどうでもいいって思ってるでしょ」
「そんなことないです。くるみのご両親は俺にとっても家族みたいなものですから」
「そう。なら、そういうことにしようかしら」
くるみの母親は、くるみに似た目元を細める。
「私はね、くるみが幸せならそれでいいし、修くんは『それだけ』を考えてくれるでしょう。自分の幸せまで考えてくれる娘の夫より、娘を一番に考えて幸せにしてくれる娘の夫ならそれでいいのよ」
(この人は昔からこういうところがある)
小さなころから、相手の求めてることがわかってきたせいで、教師や周りの人間、自分の両親さえも簡単に懐柔できて、『手のかからないものわかりのいい子』『優しい子』だと言われ続けてきた。
本心を見抜かれることなんてほとんどと言っていいほどなかったし、周りの人間を自分の思い通りに動かすのもたやすい。それが当たり前だった。
でも、この人は……くるみの母親だけは昔から、自分のそう言う部分を見抜いていたように思う。
忙しい両親の代わりに、自分によく目をかけてくれていたからかもしれない。
(だけど、この母親はそれを分かった上で、娘を預けてもいいと思ってくれていたんだ)
その感慨深さと、少しの恐ろしさを感じながら、俺はお礼を告げてその場を後にした。