私、今度こそあなたに食べられません! ~戻ってきた俺様幼馴染ドクターと危ない同棲生活~
「変でも、俺とくるみだけのことだからキミには関係ないな」
ぴしゃりと告げて俺は一足先に歩き出しくるみを呼ぶと、くるみは、その男子に、またね、と別れを告げて俺についてくる。
腹が決まると怖いものなんて何もなかった。
「くるみ、あの子は誰? クラスの子?」
「うん、名木くんっていって、今、席が隣なの。親切で優しい子だよ」
「ふうん。きっとくるみのこと好きなんだろうな」
「私も好きだよ」
「は?」
思わず低い声が出て足が止まる。
それにくるみがびくりと体を震わせてこちらを見ていた。
「え……な、なによ? 修にぃ、顔怖いよ」
「じゃあくるみは、あいつが好きってこと?」
「そうだけど。なに?」
あまりにもあっさり言うので、訝し気に聞いてみたら、結局あの子以外も今のクラスの子はほとんど好きらしい。
「あ、でもね。一番好きな人は秘密!」
ふふっと楽しそうに笑ってくるみは言った。
たぶん自分なんだろうな、とうぬぼれではなく思う。
でもそれは、自分の求めているような感情ではないと、同時に思った。
「きっと俺の『好き』とくるみの『好き』は違うんだろうな」
俺は小さな声で呟いてまた歩き出す。
その時はそれで良いと思った。
くるみはそういうことに疎いことは知っていたし、そのままで十分だと。
今、くるみに本気で好きだと言われたら、何をするか自分でもわからない。
―――俺は、くるみにこちらを見てもらえなくなること以外、何も怖くはなかった。