私、今度こそあなたに食べられません! ~戻ってきた俺様幼馴染ドクターと危ない同棲生活~

 戦略的に結婚の約束までしてくるみの気持ちは抑えたつもりだったが、出発直前になってくるみが勝手に退学届けまで出して、どうしてもついていきたいと言い出した。これが一つ目の誤算。

 くるみは、こういうところも含めて、まだ子どもだ。
 自分の人生を見誤ってしまうくらいの……。


 俺はその日、帰るとすぐ、先程くるみの父親から受け取ってきた『退学届け』を見せる。

「どういうこと? ちゃんと説明しなさい」
「どうもこうも、見た通り。私、退学することに決めた。それで修についていく。パスポートも取ったし。……ここに来た時からずっと考えてた」

 くるみはきっぱりと言う。

「何をやってるんだ!」
「だって……。今離れたらだめな気がするんだもん……修は私と離れて平気なの?」

 平気なわけないだろ。
 その言葉をなんとかして飲み込んだ。

 しかし、連れて行ったら、ボストンでくるみは一人、好きなことも諦めて俺だけを待つ日々。俺も研究よりくるみを優先してしまうのは目に見えている。そんなことで成功できるほど、今自分のしている研究も甘くはない。
 それにボストンで俺の欲望のままにくるみとの子どもを作ったとしても、異国で一人、子育てできるほどくるみは強くない。それもよくわかっていた。
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