私、今度こそあなたに食べられません! ~戻ってきた俺様幼馴染ドクターと危ない同棲生活~
5年もあればくるみの新しい生活もある。
くるみは誰とも付き合ってはいなかったが、一人、くるみの『お隣さん』で同じ勤務先という栗山栄一助教がいたのは最初に気がかりになった。
―――明らかにくるみのことが好きそうな男だった。
しかも、安易にそいつを部屋にまで入れていることを知って、俺は頭を抱えた。
相手がチキンだからこそ何とかなっていた話だったのではないかと思うと、ぞっとした。
くるみは少々きついお灸をすえて、その夜、出かけようとする栗山先生を見つけて声をかけた。栗山先生も負けないようにか早々に口を開く。
「最初、会ったとき、思いっきり睨まれて驚きました」
「いや……こちらの様子をうかがっていたようなので、不審者だといけないと思って、つい」
ハハ、と乾いた声で笑ってから、まっすぐ栗山先生の目を捉える。
「くるみにもし、恋愛感情なんて持っていても無駄ですよ。聞いているでしょう、結婚するんです俺たち」
「彼女はそれを受け入れてますか? そもそも……大の大人が一か月くらいならホテルに住むのが普通だと思いますが。病院の先生ならお金がないわけでもないだろうに」
「そんなの、くるみとの愛を深めるために決まっているでしょう。ここのアパートは壁も薄いから、先ほどの声も聞こえていたのでは?」
「……!」
栗山先生は、口ごもって顔を赤らめた。
やはり聞こえているらしい。
「これ以上、彼女のああいったときの声を聞かれるのも俺もあまり嬉しくないし、栗山先生も他の男との情事なんて聞きたくはないでしょう? ちょうど研究が忙しい時期でよかったですね。研究室に寝泊まりしていても何もおかしくはない」
俺はニコリと笑って、栗山先生にそう告げた。