私、今度こそあなたに食べられません! ~戻ってきた俺様幼馴染ドクターと危ない同棲生活~
それから、やっぱり彼女と接触した熊岡にも、公には言えない方法でお灸をすえて、彼女がまっすぐ俺に向かい合ってくれる日々を楽しんだ。
彼女に二度目のプロポーズをすると宣言した日は間近に迫っていた。
そんなある日、
「高梨病院長まで懐柔してるのか、猪沢は」
打ち合わせの終わりに須藤に声をかけられて、俺は須藤の顔を見る。
須藤は俺の高校時代からの同期で、現在、理学部の准教授。
ボストンに行く前から学部の枠を超えた共同研究をしている。
プライベートも、研究も、優秀で抜け目のない男だ。
俺はなぜか時々須藤に似ていると言われるけど、こんな腹黒そうな奴と一緒にしないでほしい、と思っている。
今日も須藤は、内心何を考えているのかわからない笑みを浮かべていた。
俺はそれを見て苦笑すると先程の須藤の質問に答える。
「まぁ、恩は売っておくに限るからな」
ただ、病院長も恩を売られていることくらいはわかる人だ。
でも、万年人手不足でリスクもある病院の中で、頼りにできて、体力が無尽蔵にある人材はなかなかいない。
病院長はそれも分かって俺に恩を売られているのだと思う。クセが強い教授だけど、もとは自分の研究室の教授ということもあって、そのあたりはよくわかっていた。
というか、そもそも須藤だって、学長を懐柔しているクセに……。
そう思っていると、わかっているかのように須藤がニコリと笑った。