私、今度こそあなたに食べられません! ~戻ってきた俺様幼馴染ドクターと危ない同棲生活~
「で、何要求したの?」
「要求なんて人聞きの悪い。ただのお願いだ」
「同じだろ」
須藤は笑って、で? と首を傾げる。
「土日の救急医増員、院内・学内保育園の拡充と、助手の部局間交流くらいだよ。病院長にとってはどれもたやすいもんだ」
俺は病院長にお願いした項目のいくつかを伝えた。というかこまごましたものを含めるともっとあったのだが。
それを聞いた須藤は吹き出す。
「職権乱用しすぎだろ」
「お願いしたら聞いてくれただけだし」
「病院長の何の弱み握ってんの。教えてよ?」
生き生きした表情で須藤が問うてくる。
(お前、そんなのだから腹黒いとか、ゲスドウとか言われるんだよ……)
そう思って息を吐いて、答えた。
「そんなのないし、知ってても須藤に教えたら悪用されそうだから教えない」
俺が言うと、須藤は心底楽しそうに笑う。
「ま、いいけど。全部、あの子のためなんだよね。今、芦屋のお気に入りの」
「どこかのだれかが、もとの芦屋のお気に入りを自分だけのものにするから」
「だって、芦屋って変な男以上に脅威だし」
「確かに」
俺たちは顔を見合わせて苦笑する。
芦屋は男にもモテるくせに、それ以上に女にもモテる特異な人間だ。